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運動生理学博士・彦井先生コラム

運動を行っていれば安心なのでしょうか?

2024.11.20

世界保健機関(WHO)は「身体活動および座位行動に関するガイドライン(2020年版)」の中で、成人(18歳~64歳)および高齢者(65歳以上)に対し、主に次のような運動(身体活動)を推奨しています。

  • 週に150~300分の中強度の有酸素運動(身体活動)、もしくは75~150分の高強度の有酸素運動(身体活動)、またはその組み合わせで同等の時間・強度となる有酸素運動(身体活動)
  • 週に2日以上、主要筋肉群に中強度以上の負荷をかけた筋力トレーニング
  • 毎週の身体活動の一つとして、バランス機能を高める身体活動(高齢者のみ)

これらの運動(身体活動)を習慣的に行うことにより、総死亡率および循環器疾患死亡率の低下、高血圧、部位別がん、2型糖尿病などの生活習慣病の予防、メンタルヘルス(不安およびうつ症状)の改善、肥満の解消などがもたらされるとされています。

一方、京都府立医科大学の研究者らが2021年に発表した研究報告によると、6万人超の日本人を平均7.7年間追跡した結果、日中の座位時間が長いほど死亡リスクが高くなり、座位時間が2時間増えるごとに死亡リスクが15%増加することが示されました。驚くべきことは、身体活動量が増えても、座位による死亡リスクはわずかにしか低下しなかったことです。これは、運動を習慣的に行っていても、座位時間が長ければ長いほど、その健康効果が損なわれることを意味していると言えるかもしれません。

運動を行っている人では、推奨される運動量に見合うよう工夫したり努力したりする必要がある一方で、日常生活の中での座位行動(座業、座談、テレビ等の視聴、車の運転、寝転がるなど。ただし睡眠は含まれない)をできるだけ減らすことが大切です。長い時間座っていることは、運動不足や身体不活動をきたすだけでなく、座位行動そのものが健康への影響を引き起こします。これらを回避するためにも、座位行動を減らす工夫や努力が同時に求められると言えるでしょう。

運動を行っているだけでは安心できません!普段から座っている時間をできるだけ減らすことが、運動習慣の有効性をさらに高めると期待されます。

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